時計の世界に興味はあるけれど、どこからどう入っていけばいいかがわからない――そんな方は、並木浩一さんの著書『腕時計一生もの』(光文社新書)を手にとってみるといい。時計の選び方から歴史、名作の見どころ、鑑賞法、時計を身に着ける意味、時計の世界に確実に導いてくれる。評論家の文章にありがちな難解さは微塵もなく、複雑なパーツの役割や見どころも、じつにわかりやすく解説されていて、どんどん読み進むことができる。時計好きはもちろん、特段興味がない人であっても、教養本として間違いなく楽しめる一冊である。読み終わる頃には、時計という森にかかった濃い霧が晴れ、いきいきとした木々の姿がはっきりと目に見えてくるはずだ。
広汎かつ複雑な時計の世界をわかりやすく解説できる高度な知性。これこそが、並木さんが時計評論家として熱狂的な支持を受ける理由である。
まずは生い立ちに触れておきたい。1961年、横浜に生まれた並木さんは、幼少期に足に大けがを負ったため、家で本を読んで過ごすことが多かったという。


















